『キリスト教~その過去、現在、そして未来』を歴史的観点から紐とく
『キリスト教 ~ その過去、現在、そして未来』
CHRISTIANITY: A History
- 規 格: DVD(英語音声)全8巻(各巻50分) 英文スクリプト付
- 制 作: 英国 Fremantle Media社 国際配給 2010年1月発売
- 本体価格: 8巻セット 280,000円 分売各巻 38,000円
- 注文番号: GLG-004
今から2000年前、中東の片隅で新しい宗教が生まれた。この宗教は現在の地位を獲得する過程で我々の考え方を変え、多くの人々に救いと希望を与える一方で、無数の人々に死と破滅をもたらした。そして今、世界中で信仰されている。
キリスト教徒はもちろん、他の宗教の信徒も、あるいは無神論者でさえも、キリスト教が我々の住む世界を形作ってきたことを否定することはできないだろう。
『キリスト教~その過去、現在、そして未来』は、キリスト教がたどってきた道のりを新たな視点からとらえる全8巻構成のシリーズ。
1巻ごとに交代するプレゼンターにはキリスト教徒もいれば非信徒もいるが、ハワード・ジェイコブソンからラゲ・オマール、シェリー・ブレアに至るまで、それぞれが深い思い入れを持ってこのシリーズに参加している。
パレスチナでキリスト教が誕生し、ローマ帝国で公認の宗教となり、ブリテン島に浸透していく過程や、十字軍の血なまぐさい影響、宗教改革による不寛容と分裂、植民地化を通じた世界各地への拡散、科学の発達がキリスト教にもたらした深刻な影響など、キリスト教史における重大な出来事を各巻で深く掘り下げていく。
そして最終巻を担当するのは、著名なイギリスの法廷弁護士シェリー・ブレア(トニー・ブレア前英国首相夫人)。20世紀に戦争、大量虐殺、社会の激動という形でキリスト教に突きつけられた課題を振り返り、キリスト教に世界宗教としての未来があるかどうかを考える。
第1巻 ユダヤ人イエス (解説 ハワード・ジェイコブソン)
Jesus the Jew
第1巻では、イギリスの著名な作家、ハワード・ジェイコブソンがキリスト教の起源とその影響について検証する。キリスト教はユダヤ教から生まれたものだが、ユダヤ人にとってはつきまとう災厄だった。四つの福音書はイエスの受難をユダヤ人のせいにし、彼らを“悪魔の子”として永遠に断罪した。その結果、ユダヤ人を憎悪する神学が発展し、ヨーロッパのユダヤ人は20世紀に至るまで虐殺、血の中傷、拷問による強制的改宗に苦しめられることとなる。キリスト殺害の罪をユダヤ人に負わせる概念をカトリック教会が公的に否定したのは1965年のことだった。キリスト教にとって、ユダヤ教とは後ろめたい秘密なのだろうか?
そしてこの罪悪感こそが、キリスト教の教義に織り込まれたユダヤ人への嫌悪を解明する鍵なのだろうか?
第2巻 ローマ帝国 (解説 マイケル・ポーティロ)
Rome
第2巻では、ローマ帝国のコンスタンティヌス大帝が後世に与えた影響を検証する。西暦312年、大帝は啓示を受け、キリスト教に改宗する。これにより、カルト宗教として迫害されてきたキリスト教はローマ帝国に公認された特権的な宗教へと変容し、コンスタンティヌス大帝は国家と教会の長となる。かつてカトリック信徒だったポーティロは、政治家ならではの視点からコンスタンティヌスと教会が手を組む過程を追い、無慈悲な帝国主義がキリストの平和主義的、利他的な価値観によってどれほど緩和されたかを問う。ポーティロはキリスト教を取り入れ、政敵を破る戦争において神を味方につけるという大帝の政治的手腕に感嘆しつつも、この動きはキリスト教にとっては大きな災難だったという結論を出す。
第3巻 暗黒時代 (解説 ロバート・ベックフォード)
Dark Ages
第3巻では、イエス・キリスト生誕から400年が経ち、ローマ帝国が崩壊した時、ブリテン島が経験した宗教革命を取り上げる。異なる宗教を信じ相争っていた諸部族が、キリスト教という1つの宗教のもとで1つの民となった過程をたどる。ローマ帝国崩壊後、キリスト教はケルト人の住むブリテン島西部とアイルランドで細々と信仰されていた。その後、アングロ・サクソン人の多神教、ケルト教会、そして597年に聖アウグスティヌスが再びこの島にもたらしたローマ・カトリック教会の3つが信者をめぐって争うことになる。
神学者ロバート・ベックフォードは、ブリテン島の民に新しいアイデンティティを形成する上でキリスト教が重要な役割を果たしたと指摘する。ブリテン島のキリスト教化は、現在のイギリスの基礎を作った文化史上の大事件だった。
第4巻 十字軍 (解説 ラゲ・オマール)
Crusades
第4巻では、著名な戦争特派員ラゲ・オマールをプレゼンターに迎え、十字軍の記憶が現代社会、特にイスラムと西洋の関係に及ぼしている影響を解き明かす。西洋の人々は十字軍遠征を遠い過去の出来事と考えているが、中東では今も多くの人々が十字軍の復活を信じている。同時多発テロ事件の後、ブッシュ大統領はテロとの戦いを“十字軍”と呼ぶ過ちを犯した。この声明は決して忘れられることなく、今でもイスラムのテロ組織が西洋への敵意をあおる際に利用されている。
ラゲはヨーロッパと中東を旅し、歴史家や一般市民から話を聞くことで、900年前の出来事が西洋とイスラム世界、そしてキリスト教とイスラム教の関係に、なぜこれほどまでに大きな影響を与えているのかを理解しようとする。
第5巻 宗教改革 (解説 アン・ウィドコム)
Reformation
5世紀近く前に西ヨーロッパを揺るがした宗教改革は、中世の教会を分裂させ、カトリックとプロテスタントを争わせた。古い慣習は廃止され、教皇は反キリストと呼ばれ、キリスト教徒同士が信仰の名の下に殺し合った。アン・ウィドコム議員は英国国教会の信徒として育ったが、15年前にカトリックに改宗した。その彼女がカトリックとプロテスタントを引き裂いた激動の時代について調べる。ウィドコムはルターが教皇に反旗を翻したきっかけや、ヘンリー8世が英国に宗教改革を持ち込んだ理由を知る。また、宗教改革が一般市民に与えた影響も取り上げる。
宗教改革は教会の腐敗根絶や英語訳聖書など多くの成果をもたらしたが、同時に不寛容と暴力も生んだ。宗教改革はキリスト教の内戦だったのだ。
第6巻 暗黒大陸 (解説 クワメ・クウェイ・アーマー)
Dark Continents
第6巻では、キリスト教が世界最大の宗教に成長するまでの道のりをたどり、現在のキリスト教の世界的成功は西洋による布教の成果ではないことを暴く。ラテンアメリカでは、宣教団の暴力と強要にもかかわらず、土着の信仰が根強かった。しかし現在のメキシコで、キリスト教は大きく花開いている。この国のキリスト教は単にヨーロッパの宗教を移植したものではないからだ。
現地の文化を見下すヨーロッパはアフリカでも宣教に失敗している。また、エチオピアでは宣教団が入るよりはるか昔、紀元1世紀からキリスト教が信仰されていた。
現在、キリスト教が急速に発展しているのはアフリカ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの旧植民地である。そして新しい信徒たちは、ヨーロッパこそ真の信仰に立ち返るべきだと考えている。
第7巻 神と科学者 (解説 コリン・ブレイクモア)
God and the Scientists
第7巻では、著名な科学者コリン・ブレイクモアが登場。最初は教会に守られていた科学が、宗教の存在をおびやかすものとなるまでを追う。キリスト教が誕生して以来、信徒は聖書を知識の源としてきた。しかし16世紀になると、科学者たちは天体観測の技術を発達させ、惑星の動きが聖書の教えとは異なる証拠をつかんだ。また17世紀には、科学革命がキリスト教的世界観に異議を唱えることとなる。ブレイクモアは高名な学者や聖職者へのインタビューを通じて、この4世紀に科学がキリスト教をどう変えてきたかを探ってゆく。彼は科学こそ、キリスト教がこれまで直面してきた中で最大の難問である主張し、いずれは宗教を無用の長物にするだろうと語る。
第8巻 キリスト教の未来 (解説 シェリー・ブレア)
The Furture of Christianity
誕生から2000年を経た今、西洋のキリスト教は史上最大の危機に直面している。物欲に支配された世界でキリスト教は存続できるのか?第8巻では、カトリック教徒で法廷弁護士でもあるシェリー・ブレアが20世紀を振り返り、キリスト教が戦争や社会の激動にどう対応してきたかを探る。
多くのキリスト教徒が抱く疑問は、慈悲深い神がいるなら、なぜこの世に苦しみが絶えないのかということである。ブレアは戦争やテロで傷ついた人々、ホロコーストに抵抗した人の関係者に話を聞き、苦難と信仰について考える。
ヨーロッパでは衰退しつつあるキリスト教だが、アメリカでは状況が異なる。ブレアはブッシュ前大統領夫人やジェシー・ジャクソン師からアメリカ政治と信仰の関係を学び、また最近流行のメガチャーチも訪れる。
最後にシリーズを振り返り、21世紀に向けた西洋のキリスト教の課題をまとめる。