~ 美しき書物の世界 ~ 日本語字幕版 販売終了
BBC BEAUTY OF BOOKS
- 規 格: DVD(英語音声/日本語字幕版 ON/OFF可)
全4巻(各巻30分) - 制 作: BBC 2011年(原版)
- 本体価格: 4巻セット
140,000円 分売各巻35,000円
販売終了(2023年1月) - 注文番号: MP-1113
●日本語字幕版監修: 髙宮利行(慶應義塾大学名誉教授 古書体学・書物史・中世イギリス文学・アーサー王文学)
最古の聖書から現代の小説まで、書物と人の歴史を辿る。
『BEAUTY OF MAPS ~美しき古地図の世界~』に続くシリーズ第2作目。
英国図書館に所蔵されている貴重な書物を取り上げ、制作の背景や当時の世界観、そして書物が与えた影響について、美しい映像とともに紹介する。
第1巻 いにしえの聖書写本
ANCIENT BIBLE
現存する世界最古の完全な新約聖書、シナイ写本。48書の旧約聖書と27書の新約聖書のすべてが1冊に綴じられている。4世紀につくられたこの写本は、キリスト教を公認宗教としたローマ帝国において、象徴的存在となった。365頭の羊と牛の革が使われた最高級の羊皮紙に美しいギリシャ書体が並ぶが、2万3千ヶ所もの修正跡が見られ、初期の聖書のテキストが不変で、はなかったことを実証した。12世紀になると、絢澗豪華な大型彩飾写本ウインチェスター聖書がつくられた。本文をいろどる装飾文字には、純金とラピスラズリが用いられ、イングランド芸術の最高傑作といえる。これらの聖書が語るものは、書物の技術的進歩だけでなく、宗教の存続は政治権力に左右されるということである。
第2巻 華麗なる中世の傑作
MEDIEVAL MASTERPIECE
中世後期の特権階級の家では、礼拝用に宗教書の写本が用いられるようになった。中でも美しいラトレル詩篇書は、ラテン語で書かれた詩篇と怪物などのユーモラスな挿絵からなる色鮮やかな芸術作品である。美しいだけでなく、当時の習慣や中世の精神が生き生きと描かれ、大飢僅後の貧困層の人々の日常生活も読みとれる。15世紀には、英詩の父チョーサーの『カンタベリー物語』が出版された。それまでの文学の慣習を破り庶民の言葉である英語で書かれたこと、また活版活字の技術によって大量印刷が可能になり、ベストセラーとなった。中世の世界観を表現する貴重な書物であると同時に、当時の数千の読者にとって自分を映す鏡にもなり、さらに写本から印刷本へ書物そのものが歴史の転換点となった。第3巻 不思議な絵本の世界
ILLUSTRATED WONDERLANDS
詩のような言葉、音楽のような絵、まさに絵本は歌のようだ。ヴィクトリア時代は挿絵本の最盛期を迎え、1865年に出版された『不思議の国のアリス』は、歴史上最も有名な挿絵本となった。キャラクターを詳しく描写しないルイス・キャロルの物語と挿絵画家ジョン・テニエルによる精綴な挿絵によって、言葉と絵は見事に一体化し、読者をひきつける。42枚の挿絵は1年以上かけて描かれた。キャロルの死後、300人以上の画家たちによって次々と異なるバージョンのアリスが描かれた。20世紀になると、子供だけでなく大人向けの絵本が出版されるようになった。現代の絵本でも、画家と作家の連携により生死や恐怖などあらゆるテーマが描かれ、世代をこえて読みつがれている。第4巻 社会を変えたペーパーバック・デザイン
PAPERBACK WRITE
20世紀前半になるとペーパーバックが登場し、本は飛躍的に大衆化した。表紙の歴史は、中身を保護することからはじまったが、次第に販売ツールとして活躍するようになる。1935年、良質な本を多くの人に安価で提供することを目的として、ペンギンブックスは創立された。本のジャンルを表紙の色で分けるという、画期的なものだった。ジョージ・オーウェルの『1984年』は、初版から60年間で15種類以上の異なる表紙デザインの本が出版され、商標的なデザインから挑戦的なデザインへ、社会とデザインの流行を反映しながら受け入れられてきた。21世紀の出版業界は、電子書籍の登場でグーテンベルクによる活版活字の発明以来、最大の激動にみまわれている。表紙デザインの未来は?監修者のことば
髙宮 利行(慶応義塾大学名誉教授: 古書体学・書物史・中世イギリス文学・アーサー王文学)
美しい書物をカラー写真と解説文で扱った出版物は数多い。『Beauty of Books ~美しき書物の世界~』は、その動画版といえよう。タイトル通り、本文と同時にビジュアルな美しさを誇る古代から現代までの著名な書物が選ばれている。特徴はとびきり美しいデジタル画像と、豪華な解説陣の組み合わせにある。
第1巻には、2点の聖書写本が選ばれているが、互いに対照的な写本である。羊皮紙に書かれた現存する最古のギリシャ語冊子体のシナイ写本は、数奇な運命にもてあそばれて各地を転々とした結果、1933年に英国図書館に収蔵された。一方、12世紀半ばに古都ウィンチェスターの修道院で制作されたラテン語聖書は、いまも大聖堂にそのまま美しい姿で現存しているのである。シナイ写本をこれだけ近接で撮影したクリアな画像も少ないので、このDVDのもつ価値は高いといえる。
第2巻では、「ラトレル詩篇書」と『カンタベリー物語』が紹介される。「ラトレル詩篇書」は一家の裕福さを誇示するディスプレイ用だったと考えられ、13世紀から200年間にわたって詩篇書写本は多く制作されたが、これほど見る人を楽しませてくれる装飾も少ない。一方、英詩の父チョーサーが描く、カンタベリーへの巡礼者たちが語る物語集は、当時のベストセラーであった。大陸で活版印刷術を学んだキャクストンが、帰国して真っ先に本書を出版しようとしたことに不思議はない。その後近世に入ると、中世文学はほとんど忘れ去られたのに、『カンタベリー物語』は連綿として出版が続いた。
第3巻は、挿絵不毛の時代が長く続いた英国出版史に燦然と輝く、19世紀の『不思議の国のアリス』を中心とする挿絵本の黄金時代を紹介する。ドジソンがアリス姉妹に夏のボート遊びで、面白おかしく語った話を基に作られた『不思議の国のアリス』は、当時社会風刺で有名だった『パンチ』誌のジョン・テニエルを挿絵画家に迎えて、不滅の作品となった。DVDではその効果に関して、ドジソン自身の手書き原稿や初版初刷り、初版後刷りなどが示されている。
第4巻には驚かされた。ペンギン・ブックスが誕生して75年を経て、誰もこの書籍の形態に慣れてしまっているが、書物史のうえでも、また社会に与えたインパクトの大きさでも、想像を超えているのである。DVDを見ると、衝撃的な事実が紹介される。ジョージ・オーウェルの『1984』は、ペンギン初版から60年の間に15以上の異なるカバーデザインで出版されたという。それには作品の問題意識を表紙絵で訴えるものもあり、逆に社会の意識を反映したものもある。どの時代に、誰のために、どういったカバーデザインを用いるかは、出版戦力としてきわめて重要なことが分かる。書物史に関心ある人々への最良のメッセージといえよう。